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2020-03-04

まるで宝石箱!フォッサマグナミュージアム~地質と鉱物の世界~

 2月23日、時代が令和になってから最初の天皇誕生日だ。世間では三連休となっており、折角なので自分もどこか出かけようとモンモンとしていた。花の時期はまだしばらく先だし、白鳥はもう北帰行で新潟から故郷シベリアへ帰ってしまって県内にはいなくなってしまった。何より天気がとても悪い。こんな時は屋内で何かないだろうかと考えるが、ベースがアウトドア派なので、屋内系レジャーはあまり詳しくないし、何より金がかかるイメージが先行して積極的になれない。

 そう言えば以前友人が、『フォッサマグナ楽しいよ!』と言っていたのを思い出した…糸魚川じゃん…。以前から気にはなっていたが、なにせ新潟市内からではなかなか距離があるので二の足を踏んでいたが、折角思いついた事だし行ってみるか!

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フォッサマグナとは?

 フォッサマグナ(Fossa Magna)とは、ラテン語で『大きな溝』と言う意味の言葉だそうだ。溝と聞くと、なんだ溝か…となりそうだが、どうやらタダの溝ではない。山々の地層や岩石を細かく分析して初めて分かる『地質学的な溝』の事を『フォッサマグナ』と呼ぶそうだ。つまり、上空から見て「あ、ここフォッサマグナだ」とはならない。

 この日本のフォッサマグナを発見したのは、明治時代のドイツの地質学者、ハインリッヒ・エドムント・ナウマン博士だ。明治8年から約10年間、東京大学地質学教室の初代教授となり地質家を養成し、茨城県つくば市にある国立地質調査所の設立に尽力した後、調査責任者として日本初の本格的な地質図を完成させた方だ。名前で気付く方もおられるかもしれないが、あのナウマンゾウの名前の由来にもなった人だ。

 更に詳しい内容は是非ミュージアムを訪ねてみて、実際に歴史に触れてみてほしい。因みに自分で掘った化石や、糸魚川の海岸で拾ったヒスイの原石を本物かどうか鑑定してくれるそうだ。自分が訪れた時はタイミングが悪く、鑑定作業は行っていなかった。

https://fmm.geo-itoigawa.com/ ←フォッサマグナミュージアムのHPはコチラ

https://fmm.geo-itoigawa.com/collection/virtual-tour/ ←ヴァーチャルツアーで館内を疑似体験

鉱物の展示がメイン、堅苦しさは全然無い

 博物館というと、なんだか堅苦しくて行かなくてもいいや、別に勉強したい訳じゃないし…などと思う人もいると思う。多くの博物館ではそれは誤解で、自分的にはむしろエンターテイメントだと思っている。ここフォッサマグナミュージアムでは、展示されている鉱物はまるで『宝石店』のようだった。

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 博物館って、基本薄暗い。写真は撮りづらい…。誤解を招くといけないので一応言っておくと、多くの博物館は『常設展示は写真撮影OK』な所が多い。なんなら動画もOKなんて言う所もある。

 コースに乗ってすぐに、ヒスイの原石を展示しているスペースに入る。凄い数だ!「おお!これは!」と、分かり易くヒスイな物から「コレが…ヒスイ…だと!?」な、素人にはまず分からない物までズラッと並んでいた。

 これは横浜市の理科教員を務めておられた方が生前、個人的にコレクションしていたものを、ご家族の方から寄贈して頂いた物だそうだ。これを集めておられた方は、最後まで人生をヒスイに捧げた方だった。

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 大きなヒスイ。専門的な事は分からないが、様々な鉱物や成分と入り混じってこの大きさの物になっているようだ。

 実は自分も結構鉱物系の物が好きで、小学生の頃に学校にあった鉱物図鑑を何度も何度も読み返していた。クリスタルのように完成された物も良いが、一番好きなのはなるべく発見時に近い状態の物。あるがままの宝石の姿は、少年の冒険心に一番響いてくる。

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ヒスイだけじゃない、化石の展示もスゴイ!

 ミュージアムの主な展示物はヒスイなのだが、フォッサマグナ自体長い地球の歴史の中で大きく変わってきた大地の話。宝石だけじゃなくかつてそこが海の底だった事もあったワケで、沢山の化石も発掘されている。

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 展示ケースにルーペも設置されて、細かいディテールも見やすくされている。

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 ド定番の三葉虫も!…って、鉱物系に明るくない方にとって三葉虫が化石の定番かどうかなんてなかなか分からないか…。昔は恐竜博のようなイベントが行われると、お土産コーナーには決まって重厚なプラケースに入って、脱脂綿にくるまれた三葉虫の化石が2500円くらいで売っていては、少年たちの胸をロマンの炎で焦がしたものだ。

 自分も最近知ったのだが、『三葉虫』は生物の種類であって、三葉虫という名前の生き物ではないそうだ。

化石の種類も様々

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 化石と言えば、恐竜や魚など生き物を思い浮かべる事が多いが、植物もまた、同じように化石として全国各地で出土する。

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 他にも貝や水生植物の化石なんかも展示されている。

人の進化もまた、共にあった

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 地質の変化変動は、途方も無い時間の流れの中にあった。その中で人の進化も共にあって、土地から発掘されるヒスイなどの宝石類は、縄文時代には装飾品として高度な加工が施されたものが多数見つかっている。糸魚川で見つかるヒスイはまさにフォッサマグナの恩恵だ。

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 類人猿から人類へ…この像を見ていると、どこかで会った事があるような気がしてくるのだが、それも当然だろう。なぜなら自分達の太古の姿であり、遺伝子の中に古の記憶として残っているのだ…みたいな事を言ってみる。

 因みにこの博物館、結構広い土地に立っていて、外には縄文時代の暮らしを再現した藁の住まいなどが展示されている。

フォッサマグナを発見した人の『記憶』

 先にも述べたフォッサマグナの発見者、ハインリッヒ・エドムント・ナウマン博士の遺品も展示されている。子孫の方から寄贈された物だそうだ。そこには博士だけじゃない、博士と共にあった人達の事も語り継いでいる。

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 暖かな様式の古民家をイメージした展示室内には、博士が地質調査に使った小道具や書類、愛用していた所縁の品や家族の方の写真まで展示されている。宝石箱の様な煌びやかな展示の中で、ここだけタイムスリップしたような空気感があって自分はとても好きだ。

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 ナイフやコイン、刀のツバまで、博士のコレクションだろうか。鉱物系が好きな人には、収集癖のある人が多いように思う。

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 とても渋いアンティーク。調査の記録だろうか、何が書いてあるかは分からないが、高度計やカンテラを見る限り、何やら冒険めいたものを感じる。

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 博士直筆の手紙だろうか、残念ながらこれも読めない。ただ、恐ろしく達筆だ。ウィンドウズのフォント顔負けだ。

 博士が実際に愛用していた椅子も展示されていたり、古い集合写真も飾られている。当時の息遣いまで伝わってきそうなアンティークの数々は、いつも忘れがちな何かを伝えてくれている。暖色系の暖かな雰囲気のこの場所に展示されていたのは、まさに『博士の人生の記憶』だった。

栂海新道(つがみしんどう)と24のジオサイト

 糸魚川周辺には『ジオサイト』と呼ばれる、地質、文化、歴史を実際に感じられる場所が24か所存在する。カテゴリは主にヒスイ関係、姫川、糸魚川―静岡構造線、山間地の自然遺構に分かれているようで、それぞれに特有の歴史を持っている。

 ミュージアムではそのジオパークの一つに数えられる栂海新道にまつわる展示があるのだが、そこにはコース開拓に尽力した方の形見が展示されいた。

https://geo-itoigawa.com/igp/about/24geosite/ ←糸魚川ユネスコジオパーク

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 山が好きな人ならこれを一目見ればピンとくるだろう。そもそも日本アルプスはこのフォッサマグナの上に出来上がっている。そこはもう日本の山屋にとってロマンの塊でしかない場所だ。

 この展示によると、親不知と日本海をつなぐ登山道として栂海新道があり、親不知のジオサイトを起点に多くの峰々を越えながら白馬岳に至るコースを指す。これに関しては沢山のサイト記事があるのだが、どれを見てもロマンの塊だ。全部歩いて帰ってくると一週間くらいはかかるのかな?一度でいいからこんな山旅をしてみたいものだ。

小野建さん サラリーマンが開いたロマンの道

 玄人の山屋なら多くの方が存じているであろう栂海新道。それを開削したのは化学工業会社の技術者だった『小野建』さんと、その仲間達だ。10年もの歳月をかけてヤブを刈り払い、手で作り上げた道。地図を見る限り、尾根筋に通ったコースで、これを開削するのはさぞ難儀した事だろうと思いを馳せる。登山道を歩く多くの登山家と違って自分は、山菜採りの為になかなかとんでもない所を通るので、話を聞いただけでも体の節々に痛みごと伝わってくるようだった。

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 小野さんが愛用されていた道具たち。2014年に81歳でこの世を去られた小野さんのご遺族の方から寄贈されたそうだ。こうやって自身の生前の記憶を鮮明に残せるのも、多大なる功績の賜物だ。見返りなど求めない、ただ真っ直ぐな気持ちだけが伝わってくる品々だった。

 今登山を楽しんでいる多くの山屋は、その道がどんな風にできたものなのかを知らない人が圧倒的に多い。むしろ、道など最初からあって、あるのが当たり前と思っている人が大半だろう。自分は10代の頃に里山整備で山を開き、登山道の整備をした経験がある。今でも自分に必要な道は自分で開いているので、登山道を維持継続するのがどれだけ大変な事であるかをこの身を持って知っている。きっと何事にも言えるのだろうが、道を通してくれた先人達には、素直に感謝していきたい。

魅惑の化石!魅惑の宝石!そこはまるで宝石店!

 博物館の展示って、いかに展示物を輝かせるかを頭のいい方が真剣に考えているので、ホントに専門店顔負けの陳列なんですよね。小売業の方なんかは、売り場づくりに困ったら博物館を参考にするのも手なんじゃなかろうか。

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 化石がまるで宝石店のように並んでは輝いている…!レプリカか本物かはチョット分からなかったが、これだけビッシリと動植物の化石が展示されているのは圧巻だ。化石とかよくわかんな~いとかいう人も、今日まで生きてきて一回くらいはどこかで見た事あるであろう形の物ばかりだ。

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 たまにビックリ映像特番とかで、小魚を捕食したまま凍った魚の映像が出る事があるが、まさベイトを捕食したまま化石になった魚はコイツくらいなものではなかろうか。釣りをする人間にとってはなかなか衝撃の一品だった。

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 この魚の群れは、なぜ群れのまま化石になってしまったのだろうか。シンプルに考えると、なかなか奥が深い。

そこはまるで宝石店!

 ヒスイを始め、多くの宝石類は原石のままだと結構地味な風体をしている。それでも鉱物好きな人にはそれもありのままの姿として好きなのだが、やはり磨きをかけたものは格別だ。

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 昔やったRPGには、こんなクリスタルを集めるものや、通貨にしているものが沢山あった。

 これは石英と言う鉱物で、占いで使う描写でよく描かれる水晶玉やガラスの原料なんかになっている実は結構身近な鉱物。因みに水晶は正確には、この石英が六角柱に結晶した物を指す。探すと意外と簡単に見つかる鉱物で、様々な成分や不純物が混じって多彩な彩を魅せてくれる。

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 子供の頃、山の斜面の崩れた所で『金塊』を見つけてしまった…。興奮した、これは大発見だと!しかしその金塊の正体は、『黄鉄鉱』という鉱物だった。これも結晶化して角が出来る為、非常にキレイな見た目をしている。しかも金色だ!知らない人に「これ、金塊だよ…」って見せたら大変な事になりそうだ。

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 ガラスケースに大切にしまわれた鉱物達が、ライトアップされて煌びやかに展示されている。スーツ姿の綺麗なお姉さんに接客されたら、ついついどれにしようかと考えてしまいそうだ。ここはまるで宝石店。並んでいたのは、大地からの贈り物だった。

長者ヶ原遺跡公園

 ちょっと番外編っぽくなるが、ミュージアムで入館チケットを購入する際に少し離れた所にある『長者ヶ原遺跡館』のチケットも同時に購入できる。そこには、更に少し離れた所にある『長者ヶ原遺跡公園』で発掘された土器などの出土品を展示している。

 新潟は縄文時代の土器や貝塚が多数出土しているので、県内の博物館は大抵どこでも縄文展が常設されている。ここでの写真撮影はチョット判断に迷ったので撮っていない。館を出て林の中を軽く散歩しながら、公園へと行ってみた。

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 道端にフキノトウが出ていた。今年は雪が全然無いのでもう『塔』になり始めていた。

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 落ち葉が敷き詰められ、地面は柔らかな腐葉土になっていた。手入れされた林は、新緑の頃にはどんなにキレイだろうと思わせる。

かつての暮らしを再現

 時期が時期なので特にイベントらしい事はしてなかったが、縄文時代の家を再現したものが展示されていた。実際に中に入る事もできる。

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 五軒ほど点在している家は、それぞれ違う形をしていて、倉庫の様な役目を持っていたであろうものもある。

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 当日は結構風が強かったが、中は意外とあったかい。藁で出来ていると隙間風とか入りそうだが、そこは意外と無い。中で火を使う前提なので、天井が抜けている事が多く、常に換気が出来ている。

 縄文時代の住まいはこれでも意外と合理的で、膨大なエネルギーを消費する現代住宅と比べると実にエコだ。

 縄文時代にはヒスイが沢山利用されていて、勾玉を作る技術はかなり高度なものだった。それを飾りに使ったり、祭りに使ったり、のちの時代には献上品として送られたりととても重宝された。フォッサマグナと縄文の暮らしには深いかかわりがあったのだ。

帰りの寄り道も忘れずに

 上越エリアの海沿いの国道に道の駅が点在していて、マリンドリーム能生に立ち寄った。

 時間も遅かった為、浜焼きのめぼしい物は殆ど売れてしまっていたが、あん肝があったので買って帰った。どうせ寄り道するのだから、もっと時間に余裕をもっていれば良かったといつも後悔してしまう。

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 コッチ方面に来る時は大体いつも柏崎のサバサンドを買って帰る。高速のSAで米山サービスエリア下りの食堂で買える。これが旨いんだ!

 本当はミュージアムの後はヒスイ海岸でヒスイ探し…なんてやるのが一番絵になる観光なのだが、天気が凄まじかったのでやめた。実は親不知と言う地域にチョット所縁があって、いずれじっくり探索したいと思っているので、その時また改めて行こうと思う。

フォッサマグナミュージアム

フォッサマグナミュージアム|新潟の観光スポット|【公式】新潟県のおすすめ観光・旅行情報!にいがた観光ナビ (niigata-kankou.or.jp)

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