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2022-05-27

ネイチャーフォトを考える・山菜山歩き番外編

 山菜を求めて山歩きしていると、普段の登山とはまた違った道や場所へ入り込んでいくのですが、そういう所にはメジャーな場所には無い魅力があふれています。

 登山者でごった返す山頂とは違い、イワナが見える沢やカモシカの歩く道、森を渡るサルや大騒ぎするカケス達。そんな森の中を歩いていると、こっちが本当の山歩きと言える事なんじゃないかと思うのです。

 前回まで投稿していた山菜記事の番外編として、山菜を求めて歩いた山の風景を綴っていきたいと思います。一般的な登山とは違い、生の自然を見れるのはこんな所だけなのかもしれません。

目次

◆森の聲

 静かな森…という表現は自分の中ではあまりしっくりこない。どちらかと言うと森は結構騒がしい所です。たまに風が止むと一瞬静まり返りますが、大体騒がしいです。

 森の中が静かと感じる人はきっと、普段から街の喧騒に晒されて感覚が鈍っているのでしょう。三日も居ればいかに騒がしい所かすぐに分かると思います。

●木漏れ日

 深い森に入ると、広間でも結構暗い所が多いです。この時期森の中に差し込む太陽の光は、盛大に草木が茂り光を遮るものが多くなる盛夏の頃と違って、キラキラと揺れるように落ちてきます。

F7.1 SS1/15 ISO-100 -1EV 48㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 まるで天然のアトリウム。登山道とは違い整備などはされないので、一度水が通ると雪が解けたり雨が降ったり何かと水路ができがちです。所によっては次の年には通れなくなるような事もあるくらいです。

F7.1 SS1/30 ISO-100 -1EV 35㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 ここが道だと言って、誰がそう思うでしょうか。岩石の上からでも沢山の植物が根を張り葉を伸ばしています。

 秘境と呼ばれるような所でも大抵それなりの道があるものですが、山菜採りや狩猟で訪れるようなエリアでは道なき道を突き進んでいきます。この場所も、雪解け進む春と、藪が完全に落ちる晩秋の頃しか通る事ができません。

 勿論、何年も通っていますがここで『人』とすれ違った事は一度もありません。

F3.2 SS1/200 ISO-100 -1EV 53㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 杉が立ち並ぶエリアに入る。麓の方では古い時代に森林保護の為に植林された杉林が森を囲んでいる。そんな麓の植林地帯では時折間伐作業が行われていますが、そんな所の時点ですでに車も満足に入れないので、これでは大変だといつも思います。

 日本にはそんな植林杉の杉林がかなり多く存在します。かつて盛大に森林伐採が行われた時代の罪滅ぼしとし、兼建材調達の為として植えられたようですが、花粉症という国民病を招いたり、手入れができず結果的に森林が荒れたりと弊害の方が大きかったようです。

そんな杉の木の種は、山の奥へと運ばれて人の手を借りずに成長して繁栄しているようです。

●水の音

 豊富な雪解け水が流れ込む沢が多く絡み、小さな滝や枝沢が無数に形成されて森の植物達を育んでいる。ここはそんな所です。

F11 SS1/13 ISO-100 0EV 24㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 地形を見ながら上ではなく奥へと進む道から見下ろした沢の風景。足元は非常に悪く、下を見るだけですくむような景色ですが、景観を良くする為に手が入っている訳ではいありのままの風景がそこにはあります。

 谷底には雪代が流れ込んでブルーに輝く綺麗な沢が流れているのに、その景観を全然享受できない程混み合って狭々しい風景。本当は開けた場所で三脚を立てて、NDフィルターなんか装着して、朝もやのかかった時間帯を選んだりして撮るのが最も良い写真になるのでしょうが、撮影者であるDai自身の目線から見たこれが一番リアルな風景写真です。山菜の時期にはいつもこんな風景を横目に山歩きをしています。

F11 SS1/5 ISO-100 0EV 27㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

  新潟は意外と秘境天国だと思います。なのにネイチャーフォトグラファーが全然来ない。いや…来ない事も無いのですが、もうチョットだけ足を踏み入れたらもっと良い所あるのにといつも思ってしまいます。

 新緑から少し過ぎた頃の風景が、もはや夏を思わせるようで季節の流れの速さを思い知らされます。

F22 SS1/2 ISO-100 -4EV 50㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 NDフィルターがあったらどんなに良かった事だろうといつも思います。自分は結構な貧乏なのでNDフィルターなどの高価な備品になかなか手が届きません。それでも根性で流れる水の風景をNDフィルター風に撮ってみました。

 谷を降りたり上がったりとなかなか大変ですが、自分だけの特別な場所が沢山あるのも、こんな奥山歩きの魅力の一つです。

●森の風

 木々の間をすり抜けていく森の風は、時に強く時に柔らかく通り抜けていきます。まだ至る所に残雪があるこの時期、時々クーラーのような爽やかな冷風がほほをかすめていきます。

F4 SS1/100 ISO-100 -1EV 24㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 細い枝沢が絡む所には残雪と言うか雪渓が残っていました。中はガッツリ空洞で、上を乗り越える時の緊張感が野性味溢れて、これはこれで楽しいです。

 下に降りて中を覗いてみると、雪に押しつぶされた木から新芽が芽吹いていました。こういうのを見る度自然界の逞しさをまざまざと思い知らされます。

F4.5 SS1/200 ISO-100+0.3EV 33㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 風と共に頭上を走り去っていく春の雲。時に照らし時に曇らせ、森のコントラストを上げていく。

 沢に近づくと風はより一層冷たさを増しています。その昔、水クーラーという冷房機がありました。現代でいう冷風扇みたいな感じですが、クーラーのように乾いてはいない冷たい風がそんな水クーラーがあった時代を思い起こしてくれるようです。

●命の聲

 静かな森…とは程遠い騒がしい春の森。歩いている頭上ではカケスが喧嘩でもしているのか、大騒ぎしながら何羽も行ったり来たり。ゴジュウカラやキセキレイ、キビタキの囀りも聞こえます。

 残念ながら今回は望遠レンズを持って行かなかったので(荷物になりすぎて)野鳥の撮影は叶いませんでしたが、森にあふれる命の聲が届いたらと思います。

F5 SS1/60 ISO-100 0EV 35㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 森の怪物から小さな花の贈り物。

 どうなったらこうなるのか皆目見当もつかないような状態の樹木。途中から裂けてそこには小さな花が咲いていました。一体どれくらいの時間があればこうなるのか。どんな奇跡が起こればここに花の種が付くのか。想像力を働かせれば働かせる程分からなくなる自然界の逞しさです。

F3.5 SS1/15 ISO-100 0EV 70㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 小さな沼地に出ると、杉の木の根元にモリアオガエルが居ました。

 地域によっては天然記念物に指定されている本種ですが、自分が住んでいる新潟県でも準絶滅危惧種、奈良に至っては絶滅寸前とまで言われ、トータルでは年々確実に数を減らしているようです。

 特徴的な泡の卵塊を水辺の木々の葉に残すこの光景は、自分の住んでいる地域では5月頃に最も多く見かけます。なんせ森の奥の生き物なのであんまり姿を見かける事はないです。

 人の手が入る事で環境が変わり数を減らし、人の手を入れる事で保護される。人間とはなんとも不思議な生き物です。

F7.1 SS1/5 ISO-100 -1EV 35㎜ PENTAX・K-1 D-FA24-70

 帰りにもう一度沼地に立ち寄ってみた時にはもうあのカエルはもういませんでした。根元には卵塊だけが残っていました

◆ネイチャーフォトとは何だろう

 自然風景を収めた写真ならネイチャーフォトと言うのか、畑のような人工物であとうともそれが植物とかで、太陽や雨風と共に在ればネイチャーフォトと呼んでよいのだろうか。結局の所分からないですが、でもきっとそれは『写真』と言う表現がとても自由だからなのでしょう。

 自分の中でも結構グレーな感じではありますが、基本的に『人の手が入っていない』ものをそう呼んでいます。

 それでも北海道のように広大な大地に広がる田畑の風景や、それとと共に在る空や太陽が写し取られているものだってネイチャーフォトと呼んで特に違和感を感じません。

 自分がそれで一番表現したいものは自然と人との関わりです。手が入っていない原生林でも法律によって保護されている事が殆どであり、それもまた人と自然の関わりだと思います。

 反対に人々の暮らしは自然界の力無くしては一切成り立たない事も事実です。自分は農家でもありますが、もし新潟に雪が降らなくなって川が干上がれば当然農業は成り立たないですし、不随する産業も一斉に影響を受ける事になります。

 近年問題になっている海洋ゴミも、人と自然との関わりによって起きた結果の一つと思います。石油も元を辿れば自然界の中から取り出した原料を精製して作られていますし、石油その物は太古の地球で命の歴史の始まり頃に居た藻類の骸が堆積した物と聞いています。

 ネイチャーフォトというジャンルは素晴らしいです。誰でも素晴らしく写真が撮れます。答えのような物すら無いですが、これからも自分は人と野生のあいだに居てその関わり合いを写真に収めていきたいと思います。

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