カメラもレンズも20年前じゃ考えられないくらい高性能になって、近頃ではスマホで撮った写真に写っているピースサインから指紋が盗めるなんて話まであるそうじゃないですか。
そんな高性能な現代のカメラセンサーとレンズ。高精細、高彩度、高描写…広い風景写真の隅に写る葉っぱの形までクッキリ写し取れるようになり、風景写真への意識もより高くなったと思います。
今回はそんな風景写真をより精密に撮るためにはどうしたら良いのかと言う事を自分なりに勉強してみました。
カメラの性能も大事だけど、精密に撮るには風景選びも重要に感じました。精密さで表現力を出したいなら、なんかこう…ギッシリ詰まった景色がよりテーマを強くしてくれると思いました。
結果的にはクッキリ精密に写すための絞りだとか、焦点距離など、改めて基本の大切さを再確認できました^^。
目次
- ◆絞り込み(F値)を意識して
- この写真の精密ポイント
- ヨシ
- 枝
- 絞り過ぎによる回析現象の発生
- ◆より被写体の描写力を意識して
- この写真の精密ポイント
- 被写体のディテール
- 風景の奥の方
- 被写界深度を深くするのが奥行きのある風景を撮るポイント
- ◆上の二枚を応用して撮影してみた
- この写真の精密ポイント
- 手前足元のピント感
- 奥の方のピントやいかに
- うまく応用できた!
- ◆実践編
- この写真の精密ポイント
- 再現したかった木の質感
- 伸びる枝と向こうの景色(背景)
- ◆まとめ
- 回析現象に注意し、絞りを意識する
- 被写体はパターンのようにギッシリした風景の方が、面白い写真が撮れる
- 数字(カメラの設定値)も大事なのですが、最終的にちゃんと見れていればOK
◆絞り込み(F値)を意識して
風景写真で広くピントを合わせる時、F11とかF13とか結構絞りを効かせると思いますが、今回はそこを結構意識して撮ってみました。撮影地は新潟市北区にある福島潟です。
天候は生憎の曇りでしたが、光が回ってかえって撮影自体はやりやすかったように感じます。
福島潟の潟に沿って回れる遊歩道から奥へ歩くと、人工物が目立たないこんな風景の場所があります。めちゃくちゃ重たい鉛色の雲が五頭連峰を覆うように広がっているこの世の終わり感が漂う景色ですが、自分は結構好きですよ。
●この写真の精密ポイント
どんより背景に枯れた草木の風景がなんとも重苦しいのですが、見せたかったのは手前のアシが密集する所と、細かく枝を伸ばしている木の立ち姿です。写真はタップすると拡大表示ができるようになっています。
ヨシ
拡大した画像です。単純に拡大しただけですので少々素子が荒れ気味ですが、PENTAXは悪くない!悪いのは自分のウデだ!…っという事で見ていきたいのですが、ファインダーを覗いて木が立っている辺りにピントのヤマを持ってきているのですが、絞り込んだ事と、自然光が回っている事で自分の思惑通りに撮れました。
ヨシがぎっしりと束になっているので、特に意識しないで撮影した場合なんとなくヨシと言うよりは景色の中の色要素的に写ってしまいがちですが、ちゃんとその存在感を引き立てる事ができたのではと思います。
枝
枝の部分の拡大画像です。枝の先一本一本の形まで写し取れました。これもそれなりに狙い通りには撮れています。
主たる被写体の距離がカメラからそれなりに離れいる為、どうしても全体的にふやけていると言うか、ぼんやりになりがちと言うか…。それでも風景の中でちゃんと木の枝が存在感を放てるように撮れたのは自分なりに成功したと思います。カメラの小さなモニター画面で見るのと違って、こうやって引き延ばしてみて初めてどう撮れていたのかがよく分かります。
折角フルサイズ機で撮影してるんだから、たまにはこうやって自分の写真を拡大して見て自分の技術力を確かめておきたいですね。
●絞り過ぎによる回析現象の発生
ピントをより広く、より奥に合わせるために絞りを効かせてF値を大きくしますが、その際回析現象なるものが発生するそうなのです。
絞りとはそもそもレンズの中に絞り羽という物があって、レンズが光を取り入れる量を調整する事で適正な露出や色んな表現ができるようになっているのですが、この絞り羽の裏側に光が回り込んで被写体の輪郭などがボヤっとする事を回析現象と呼ぶそうです。
この為特に逆行などが強いようなシチュエーションでは注意が必要ですと言った具合に教わりました。正直この絞りの適正な値なんてなかなか分かるもんじゃないなと思いまして、よく『風景写真だとF9が良いよ』みたいに語られるのですが、この辺の話は無難な参考値程度として捉えておくのが良いと思います。
◆より被写体の描写力を意識して
そもそも描写力とはなんぞやって事もあると思うのですが、写真における描写力とは要するにどれだけ姿形を忠実に写し止めたかと言う事であります。例えばこれが輪郭がボヤけてるとか、上着のポケットなど細かい部分がなんだか分かりにくい感じになっていると描写力は低い!…とかそんな塩梅の話です。
春時分には『福島潟の葦野焼き』で有名な所ですが、こんな具合に潟の至る所でヨシが倒れています。これも敢えて気にして見てみると結構な迫力でして、テーマにするには申し分無いのでは?と、常々思っていました。
●この写真の精密ポイント
なんと言ってもこのギッシリ感でしょう。一つの物がここまで広く、隙間なくギッシリしてる事って実はそんなに見かける事は無いので、案外貴重な風景なのかもしれません。
被写体のディテール
この場所は先程の所と違って足元なのでかなり寄って撮影する事ができました。その為拡大しても輪郭がふやける事が殆ど無く、ヨシの茎の節や穂先、更にその穂先の粒までクッキリ写し止められています。
絞りを効かせているという事もあるのですが、一番は被写体との適正な撮影距離が確保できている事だと思います。レンズにもよる事なのですが、近すぎても被写界深度の影響を受けるし、遠すぎるとその分だけ写りが曖昧になるので、レンズと焦点距離に合わせた一番綺麗に写る撮影距離が分かると、どんな風に撮っても綺麗な写真になりますね^^。
風景の奥の方
風景の奥の方の切り抜きです。絞りを効かせる事によってピントの範囲が奥へとしっかり伸びますが、勿論限度ってモンがありまして、奥へ向かうにつれてその効果は徐々に薄れていきます。
それでも絞りが効いていれば本来ぼんやりしてしまう風景の奥の方もこんな感じで結構クッキリ写し止められます。これなら写真を全体として見た時は殆どそのぼんやり感を感じませんね。
●被写界深度を深くするのが奥行きのある風景を撮るポイント
被写界深度とは、どの部分までピントが合っているのかと言う話なのですが、コレは縦横ではなく奥に向かっての話なんです。サクッと言うと、背景がボケているのかいないのか…と言った感じです。そしてこの被写界深度は、絞りを効かせる事で奥に向かって深くする事ができる。
今回テーマにした精密に撮る練習では、奥に向かって広がる風景を主に撮影したので、この被写界深度というものを意識していました。絞る事で奥になるべくピントが合うようにするのですが、奥へ行くほどペンキが薄まるように効果が薄まります。更に絞りすぎた場合、先にお話ししたように回析現象なるものが発生して折角の風景写真がぼんやり眠い感じになってしまいます。
適正絞りって…難しいですねw。
◆上の二枚を応用して撮影してみた
一枚目は絞りを意識して撮影し、二枚目は描写力を意識して撮影しました。それらの撮影の応用編として両方を意識して撮るためにはどうすれば良いか、考えながら撮影してみました。
構図も被写体の感じも同じようなモノになってしまいましたが、割と思った通りに撮れたと思います。
被写体の一番近い所から奥へ延びるような構図を探していたのですが、先の一枚目はどうしても距離があったので手前が甘くなってしまっていました。あとは絞りの分だけ奥へとピントを伸ばせるような所と言う事でここを選びました。
●この写真の精密ポイント
手前の葉っぱがどれだけしっかり輪郭を潰さずに写しとめられるかを一番意識しました。ファインダーを覗きながらちゃんとピントがキマっているか見るのが最近大変で(年齢的に)したが、我ながらちゃんと撮れていると思います。
手前足元のピント感
写真全体から見て、丁度この部分にピントを合わせるように撮りました。葉っぱの葉脈や土から出ている根っこの形までしっかり写せています。先にも話したように、絞りを効かせすぎると被写体の輪郭がふやけてしまう感じになるのですが、そういった事が無いように写せました。
近すぎず遠すぎない適正な撮影距離と、それにマッチしたカメラ設定ができたのではと思います。
奥の方のピントやいかに
地面に対してそれなりに角度がついて、なるべく画角に奥の景色が入り込むように撮っています。その中でどれだけ向こう側にピントを伸ばせるか試した部分です。
構図と立ち位置を重視して焦点距離が43㎜となんとも微妙な感じになりましたが、その状態で撮影したこの部分は撮影立ち位置からおおよそ20m無いくらいのポイントです。撮影距離だけで考えればかなり離れているのですが、風景写真なら景色の奥はこんな感じでしょう。
どうでしょう。距離の分さすがにハッキリクッキリって感じにはなりませんでしたが、それでも結構な描写力を発揮したのではないでしょうか。この辺は技術力よりもカメラの性能と言いますか、一応フルサイズ機ですしw。
●うまく応用できた!
手前にしっかりピントを合わせ、そのまま風景の奥までなるべくしっかり写し止められるように絞りや画角やらを意識して撮ったこの一枚は、ちゃんと狙い通りにできたと自分では思います。結構地味な練習ですが、上達の為には自分なりにでもこうやって細かく検証する事は大事ですね。
◆実践編!
って言うと大げさな感じになってしまいますが、自分が登山や森歩きで撮る写真ってどんな感じだったっけってのを改めて意識して被写体を探してみました。
野山歩いて撮る風景写真はいつもこんな感じ。最近ゆっくり自然の中で過ごす事も出来なくなったのでなんだか久しぶりな感覚です。
足元の水際から倒れるようにして伸びている低木。枝は水に浸かってしまってますが、それ以外の部分は枝葉を伸ばし小さな身を付けていました。
自然に対して人が感じるものは様々ですが、自分はこんな風に踏ん張るような姿によく目がいきます。特に木というのは人や獣と違って、自由に場所を変える事ができません。立っているその場所が崩れたら、共に崩れてしまうしかない存在なのです。
そんな自分の存在そのものを受け入れて、土や風と共に生き、土や風と共に朽ちていく、この一枚にはそんな感覚を込めています。
●この写真の精密ポイント
今回は手前から奥へが一番意識した部分でしたので、逞しい木の根元を手前として切り取ってみました。
再現したかった木の質感
木の肌の質感や水に映る影、手前から生え伸びる草など、敢えて雑多な感じが人の手が必要以上に入っていない雰囲気を再現してくれています。この日自分なりに意識して勉強したことがちゃんと生かされていると思います。
伸びる枝と向こうの景色(背景)
この木は奥に向かって倒れているので、メインの被写体である木そのものも奥行きがあります。この木の根元から枝先までしっかりピントを揃えられるように絞りを決め、やりすぎて回析現象が発生しないように更に注意して撮影しました。
奥の背景も必要以上に目立ち過ぎず、伸びている枝にもちゃんとピントを合わせてる事ができました。
背景が水面と言う事もあって、絞っても目立つ物が無かったのも幸いしたようです。これが背景に賑やかな景色が広がっていると、メインの被写体である木そのものの存在感が薄まってしまっていたかも知れません。
◆まとめ
今回は自分の上達の為に意識してやってみた撮影でした。近頃は教則本やネット記事が山ほどあるので、カメラ始めたばかりの方でもこの辺のテクニックが凄く上手な方も大勢いる時代です。自分も、それなりにカメラ歴あるのである程度頭では分かっていましたが、こうやって改めて実践してみるとまだまだ勉強が足りないと痛感しますね。こういうのが楽しいんです^^。
●回析現象に注意し、絞りを意識する
絞りとはレンズが取り込む光の量を調整するための機能です。その他レンズに光を当てる面積を狭くする作用もあります。専門的な事は割愛しますが、その作用によって背景がボケたり遠くにピントが合ったりします。絞ってピントが合う範囲を広げて、全体をシャッキリ写すようにする事で精密な写真を撮る事ができます。その際絞り過ぎて羽の裏に光が回り込み、写真全体の輪郭がふやけてしまわないように撮り直しながらチェックしていきます。
●被写体はパターンのようにギッシリした風景の方が、面白い写真が撮れる
絞り込んで精密に撮影するなら、なるべく細かい物がいっぱいギッシリ詰まったような風景の方が良いです。細々した風景の中のディテールをいかにして写し止める事ができるかを意識して被写体を探すといいと思います。例えば同じ野菜がズラッと並んだ畑のある風景とか、シダ類やコケ類が茂る中にフキのような大きな葉が広がる藪の景色とか、或いはビルがびっしり立ち並ぶ街の景色が見える高台から撮るとか。
●数字(カメラの設定値)も大事なのですが、最終的にはちゃんと見れていればOK
なんだかチョット元も子も無い感じの話ですが、絞りとか距離とか色々数字を意識するのは大事なのですが、最終的には写真をしっかり拡大してちゃんと見れているかチェックする事が一番大事な事だと思います。実は同じカメラ設定で同じ場所を撮影しても、チョットした事で写りが変わってしまう事は結構あるのです。つまり『所かわれば常識変わる』みたいな。絞り値一つ取ってもどんな遠景にも対応できるかと言ったらそうでもないですし、なんなら絞らない方が綺麗に写る事もよくあります。
デジタルは撮り直しが簡単です。何度も撮影してベストを探すのが、会心の一枚を収める近道なのかもしれませんね^^。
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