2018年3月17日
新潟県五泉市にある菅名岳。標高は909m、人里に近く里山として地域に愛される。地元の酒造会社によってその名を冠した清酒も販売されている 。
この辺りの山は冬になると麓の駐車場が使えない事が多く、その分歩く距離が延びる事が多い。そしてようやく入山口に着いたらトンでもなく角度のある急登、しかも所々残雪が抜けていて雪とヌタ場のコントラスト。。。
山頂に向かう緩やかな尾根に出れば雪景色を楽しみながら割と気楽に歩いていられた。しかも誰一人いない静かな樹林帯。近頃はどこの山に入っても『人間がいない事がなくなってきた』ので、このシチュエーションは非常にありがたかった。
樹氷、青空、雪景色。
この日は非常に天候に恵まれた。チョット歩けば暑くて汗が噴き出すほどだった。冬場の新潟で晴れは大変に貴重だ。新潟では雨が降らなければ『太陽が出ていなくても』晴れと呼ぶほどだ。
強い日差しに照らされて木々が纏った霧氷たちがパチパチと音を立てて剥がれ落ちていく。ふと上を見上げると星空の如くキラキラと水滴が光っていた。これを写真にそのまま残せない腕の無さが悔やまれるくらいだ。
この山へ入ったのはこの日が初めてだったが、おそらく普段はこの樹林帯は深いヤブに覆われていて眺望などさほどでもなさそう。
ある程度冬山に登っている人ならお分かりの通り、冬山は木々の葉も無くヤブは深い雪の下。樹林帯の中にいても結構景色が抜けているのだ。青空をキャンバスにして煌めく樹氷と静かな森。むしろ標高の低い低山の方がスノートレックの醍醐味をMAXまで味わえるのでは?
ふと横に目をやれば、幾重にも重なった尾根が見える。まるで十二単だ。微妙な標高の違いや、斜面の向いている方角の違いで植生に差が出る。それが壮大な風景に彩を加える。
時間が止まったような、たった一人だけの山頂世界。
木々の様子がだいぶ変わってきた。山頂が近いようだ。この辺りはまだまだ樹氷が残っていた。これからこれらもどんどん溶けていくのかと思うとチョット勿体ない気がした。
SNS全盛時代に活躍している多くのネイチャーフォトグラファーならこの景色をどんな風に切り取るのだろう。
山頂の景色はよく抜けていた。誰もいないこの世界を独り占めできた。午後になって少し風が強くなってきていたが、強い日差しに引き締まった風、パチパチと響く樹氷の溶ける音が聞こえるここはまるで時間が止まったようだった。写真を整理した関係で残っていないが、眼下には越後平野が広がっている。
溶けて、落ちて、雪に還る。それはまるで、儚く小さな命の終わりを見ているようだった。
木々の冬芽は樹氷を纏ったまま遠くを見つめている。今や遅しと春を待っている。
別の入山口へ降りるコース。その奥には、雄大に広がる会越国境山群。こんな景色を見ると、いつも胸の奥に筆舌に尽くし難い気持ちになる。そしてここには誰もいないのだ。
四層に折り重なった景色は、まるで絵画を眺めているようだった。
温暖化は少しずつ、でも確実に。
地球温暖化や大規模な気候変動によって新潟は、かつての厳しい雪国の姿を失いつつある。確かに雪が降ると大変だ。何が大変って通勤通学など経済活動がとにかく大変。かつて雪国と呼ばれる地域の多くは『冬が来る前に生存準備をしてた』。ところが現代では雪や台風など関係無く活動しなければならないので大変なのだ。
だが昨今の温暖化の影響でかつてのような雪の降り方ではなくなった。今年2020は特に酷く、あるはずの雪が無い状態が長く続いている。
雪山の風景はとても美しい。これからも写真の腕を磨いて、一枚でも多く残し伝えていきたいと思う。
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