今はSNSの時代、特にインスタなんかでは彩度マシマシ、ハイライトバキバキの華やかな仕上がりが目を引く。自分も色々やってみたが、自分に花が無い人間だからどうも気持ち悪い…やっぱりキャピキャピのギャルがやるのが一番映えるんですなWw
そんなワケで今回は、PENTAX K-1や、Ricoh GRⅢにプリインされている仕上がりイメージの『銀残し(GRⅢはブリーチバイパス)』で遊んでみた。
銀残しとは
かつてカメラがフイルムだった時代にそのフイルムを現像する際、本来であれば取り除くはずの銀をあえて残す処理をする事を言う。立派な現像テクニックの一つで、彩度が落ちてコントラストが強くなった重厚感のあるシブい仕上がりになる。
カメラ側の細かい調整や、レタッチなんかでもイメージが変わってくるが、結構男らしい写真になるのでぜひ積極的に使ってみて欲しい!
◆何気ない一瞬もシブくなる!

蓮の花の蕾にシオカラトンボが止まった。ただそれだけの事で、いつも通りに撮影していたらきっと『ふむふむ…季節感ある作品ですな…』で、話が終わるか最悪見向きもされない。でもこうやって銀残しで撮ってみると『ムム…!何やらシブい写真だ!とりあえず見てみよう!』と、なるではないか!
こんな風に一味違った仕上がりにする事で、見る人の目を引く事ができる。中にはスタンダードな仕上がり以外は好きじゃないって人も居ると思うが、そこまでド派手に仕上げている訳じゃないので、抵抗無く見てくれるのでは?
●『枯れる』が、映える

蓮の花びらが湖面に横たわる。スゴク抒情的な一幕。進んでいく季節と、散っていく花の寂しさを表現してみたかったけど、伝わっただろうか。

この仕上がりイメージは、枯れ色がとってもよく似合うと思う。

もうとっくに旬が過ぎたアヤメ。草ぼうぼうになったアヤメ畑の真ん中に、取り残されたように佇んでいた。
◆彩度が落ちているのに、色が際立つ
彩度を控えめに、コントラストは強めにしてグッと仕上げるのが銀残しなのだが、コレがむしろ色を絶妙に引き立ててくれる。彩度マシマシの煌びやかな色も良いのだが、どこか重さを感じる立体感のある色になってくれてると思う。

可愛らしく散りばめられた色も。

生命力溢れる色も。

散り際に魅せてくれる色も。
特にPENTAXって赤色がブッ飛ぶ傾向があるんですが、銀残しで仕上げると適度に彩度が抑制されるので、色飛びを防止する効果も出ているように思うのです。それにしても、色が出てもシブく仕上げられるなんて面白い表現だと思う。
◆銀残しで撮る『光と影』
彩度を落としてコントラストを上げる…ハードモノクローム的な要素もあるけど、色が完全に無くなったわけではない。銀残しにはモノクロとはまた違った光の伝わり方があるようだ。

梅雨の合間にしばしば眩しい日差しが差し込む。特に夕方近くにもなると、光芒がカーテンのように海に広がる。ちょっと出かけた帰りに通りかかった海岸線からの景色。

午後から落ち着いた雨、堤防にはハイシーズン中のシーバスを狙っているアングラー。海上にかかるモヤを光芒が照らして、佐渡ヶ島が雲に浮かんでいるようだった。
●差し込む光に『命を感じる』
少し分かりにくい事を言ったけど、銀残しで撮った光にはなんだか立体的で生々しいものを感じるのです。

大きな桜の下のガクアジサイ。木漏れ日に照らされてる姿を写真に収めたが、温度感も伝わってくれると思う。

神社の石畳を照らす木漏れ日。光が地面に投影した木の生命感が伝わるだろうか。

登山道の脇に生えていたミズ(ウワバミソウ)。植林杉の暗く鬱蒼とした中で、差し込んできた光にライブ感を感じる。
コントラストを強く表現するので、こんな風に光が必然的に際立つのだが、彩度は低いが色は見えるこの絶妙さが、よりハイライトを活かしてくれているのだと思う。
◆哀愁を伝える表現の一端
写真の表現はもっと自由でも良いと思うのです。仕上がりイメージの機能も、結局は加工と言われて否定される事がある。でも、撮影者が感じた何かを感じたように伝えられる仕上げは、決して加工とは言い切れないと思うのです。

弥彦神社にある有名なスポット。でもこれは多くの人が写真を撮っている場所の反対側から撮影したもの。人の気配が無くなって静かな雰囲気になった。
登山道沿いに立っている木に這うように上がっていく蔦。きっと殆どの人が気にしないであろうこの光景にもまた、哀愁が溢れている。

神様のつかいとして大切に守られているシカ。柵の内側から人々を見て、何を思うのだろうか…。
写真の表現はもっと自由であっても良いと思う。この銀残しと言う仕上がりイメージ機能は、それを再確認させてくれたと思います。