前回の山行で行った巻機山、少し前に購入した『Ricoh GRⅢ』も持って行った。登山でコンデジを使うのは初めて。しかもプレミアムコンデジなるジャンルに入る高画素機のGRⅢ。山ではどんな風に使えばこのカメラの良さを生かせるか色々考察しながら使ってみた。この記事では、前回の山行記でも使用した写真が重複しているが、その写真がどのような狙いによって撮られた物かを解説したいので、気にせず眺めて欲しい。
こんな事言うとなんだか矛盾が凄いが、登山で一眼カメラって実は相当邪魔になる。特に天気が悪い時なんかは。K-1は防塵防滴仕様だが、レンズが対応していないとそれ自体は意味無い。だからいくらアウトドアスペックのK-1でも、自分のように良いレンズを持っていないと雨に打たれたらいちいちザックに仕舞わなければならない。
コンデジならポケットナイフの様にサッと取り出して、用が済んだらサッと仕舞える。一眼のように重くないし、アイテムスペースも取らないので当然邪魔にならない。実は一番登山と相性が良いカメラなのでは!?
そんなコンデジの良さを生かして一眼レフのK-1を使いつつ、ポイントポイントで繰り出してみた。
◆イメージコントロールで伝える森の空気
ガスが掛かったブナ林で、イメージコントロールを変えながら風景を撮影してみた。同じ事は勿論K-1でもできるのだが、コレがGRⅢでやるとなかなか面白い。静かな森の空気を、それぞれの個性で伝える事が出来る。写真にキャラクターが付くようだ。
●スタンダード
本機の標準の撮影仕上げ。みたままの風景に一番近い写真になる。誰が見ても違和感無く伝わり、社外品のRAW現像ソフトを使っても基本的にそのまま展開されるので、一番安心して使える仕上がりイメージだ。取り合えずコレで撮っておけば失敗は無いと言ったところか。
●クロスプロセス
自分は結構すきなイメージコントロールで、スナップでもよく使っているモードだ。一気に雰囲気が変わった!森の静けさはそのままに、どこか現実から離れた記憶の中のシーンのような仕上がりになった。映画の回想シーンなんかでもこんな色調でダイジェストを回すのがあるが、それに近いイメージで使っている。ガスの中のブナ林に『追憶』のキャラクターが付いた。
●ブリーチバイパス(銀残し)
PENTAXシリーズではお馴染み(?)の銀残しだ!ブリーチバイパスは銀残しの事を言う。静けさと共に、ブナ林の温度感と香りが伝わってくるようだ。この仕上がりにすると、差し込んでくる光が神々しくなる。以前Ricohの公式サイトで『光の記憶』と言うテーマで特設サイトが開かれていた。そこでの作例にはこの銀残しがよく使われていて、息を呑むようなプロカメラマンの作例が公開されていた。自分的には寂しさや哀愁など風景の中にマイナーキーを表現したい時に使う。ブナ林に『静寂』のキャラクターが付いた。
●自分が感じた何かを見える化できる
アングルや露出など技術的な部分だけで『自分がここで感じた何か』を伝えるのは難しいと思う。そこでイメージコントロールを使うと、その何かにかなり近い物、或いはそのものを見える形で見る人に伝える事が出来ると思う。このような機能を毛嫌いする人は結構多いみたいだが、自分は遠慮なく使っていきたいと思う。
◆マクロモードが冴える!瑞々しさを纏った小さな花々のディテール
GRⅢに付いている『マクロモード』という機能。コレがオマケ程度の物かと思いきやそうじゃない。普通一眼レフならマクロレンズに替えないと被写体の細かいディテールが写らないし、『コンデジのマクロモードなんて接写のピント合わせ程度でしょ?』みたいに思われる事も多いが、本機はその辺だいぶ高性能で驚いた。
●寄りきれるからこその解像度
花が纏っている水滴が、宝石が散りばめられているようになっているのが分かる。それでいて角度を変えて背景が深くなっても、ボケ味は柔らかくて綺麗だし、ディテールも損なっていない。
小さな白い花。実はこの花を始め、白い物にはなかなかピントが合わなかった。GRⅢがそういう仕様なのかは分からないが、AFが極端に『白い物を嫌う』事が分かった。それでも上手く自分からズレていけば綺麗に写せる。小さな虫が花に顔を突っ込んでいるのがよく分かるくらいだ。
●便利な機能『アスペクト比』と『Fnボタン設定』
アスペクト比をスクウェアで撮ってみたもの。普段のL版よりもスッキリ収まっている印象だ。『写真は引き算』、耳にタコができるほど聞いたこの言葉も、こんな風にアスペクト比ごと変えてしまうとより実践できる。
自分はこのアスペクト比の変更を『Fn(ファンクション)ボタンでの設定』ですぐに変更できるようにしている。サクッと両脇をカットして被写体を強調できるし、撮り方次第でレトロ感も出せる。Fnボタンは様々な機能をクイックに使用できるように設定が可能なので、是非色々試してみて欲しい!
花が変わっても、光の具合が変わっても、イメージ通りにマクロ撮影が行える。それにしてもこの写り…フルサイズ機のK-1よりも随分良い。いや…自分がK-1を使いこなせていないだけなのだ!そもそも一番ベストなDFAレンズを一つも持っていないのが一番致命的だw
●花を撮るならマクロが良い
目いっぱいカメラを寄せて、しっかりピントを合わせればやっぱりキレイに写る。高山植物は平地の花々と違って個性的な姿をしている物が多い。そして花は小さい物が殆どだ。だからこそ数センチの距離まで寄って大きく撮れるマクロ機能は重宝するのだ。この点を拾っても、山とGRⅢの相性は良さそうだ。
●水滴の質感
マクロ撮影で被写体に寄りきれると、水滴の瑞々しい質感もしっかり捉えてくれる。
山登りしていると、こんな風に潤いのある景色に出くわす事が多い。とくに初夏の山で雨が降った後なんかは、新緑から滴る露がとても爽やかで、それだけで心も潤ってくる。今までフルサイズ一眼で望遠なんか使って撮っていたが、コンデジでこれだけキレイなら機材を一個減らしても良いだろう。
◆広角域もとっても優秀
山登りの醍醐味と言えば当然壮大な景色になるのだが、『コンデジでは難しいんじゃないの?』と、思いがち…と、言うか自分はずっとそう思っていた。
GRⅢはセンサーサイズがAPS-Cと大きく、画素が生かしきれるので広い景色も広い背景も綺麗に収めてくれる。
クロスプロセスで撮影した巻機山避難小屋付近。チョット古めかしさが出て、『記憶の中の山』みたいな雰囲気になった。写真でこんな風に遊ぶのは結構楽しいのだが、上手く使いこなせなくて少々悔しい。
白黒もw
●広い背景が入った撮影
背景はその写真に物語を付けてくれると言われている。背景を上手に使えば、被写体への思い入れも出てくる。
びちょびちょのワタスゲがガスを纏った稜線を見つめている。
一輪だけ残っていた水芭蕉の花。花単体を写すだけよりも、この花がどこで、どんな風に咲いているのか、そしてこれからどんな風になっていくのかが伝わると思う(そこまでは伝わらないかw)。
背景が入って綺麗に写るのも、やっぱりセンサーが大きいからだと思う。元々一眼レフに入っていたサイズのセンサーなので、クオリティそのものはコンデジと言うより一眼カメラだ!コンデジにしては少々お高いが、特に写真には拘らない方でも折角登山で綺麗な景色やシーンを沢山見れるのなら、これくらいあっても良いと思う。一眼の筐体と違って全然邪魔にならないし、重くないし。
◆スタートからゴールまで使い切れる使いやすさ
山に登って、山を下りて、周辺を観光して、なんなら温泉宿に泊まって…そんな楽しすぎる旅行の一連の流れの中にこのカメラは、最初から最後まで全てのシーンで使い勝手が良い!これは久しぶりに『思い切って買って良かった!』な品物だった。
そんなワケで最後に現地のお土産『かんずり・六年仕込み』の写真で終わりにしようと思う。辛そうな見た目だけど、実際はかなりマイルドで、甘じょっぱく焼き肉でも揚げナスでも何にでも合うとても良い調味料だ。物凄くおススメする!