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2020-02-13

飯豊山系とクルミ拾い そして冬へ

 子供の頃から山菜の味に慣れ親しんだ。ワラビ、ゼンマイ、フキノトウ、フキ、ヤマウド、サンショウ、ヘビイチゴ、ツクシ。高級どころではタラノメ、コシアブラ、ハリギリ、ニワトコ。秋には勿論クリ、シイタケ、ナメコなどの肉厚な味覚、自分にとって山は生活の一部でもあるのだ。

 子供の頃は村上市の祖母の家によく居た。実家のある港町と行き来しながら過ごした。新潟は海と山に恵まれた土地柄なので、海では魚を捕り、山では山菜を採るのが遊びでもあり、生活でもあった。学校の帰り道、道端に咲いているヒメオドリコソウの花の蜜を吸ってみたりしながら過ごした子供時代を懐かしく思う(今じゃとてもじゃないけど考えられないが)。

 そんな自然の恵み達のなかに『クルミ』があるのをご存じだろうか?『和グルミ』や『オニグルミ』などと呼ばれ、お店で売っている殻の柔らかい『洋クルミ(ペルシャクルミ)』と比べても風味が濃厚で野性味のある味わいをしている。新潟はこのクルミの木がそこら中に立っていて、特段珍しいと感じた事は無いのだが、人によってはクルミがそこら辺で拾えるのに驚いて、そもそも日本に天然のクルミがあること自体知らない方も多いのだ。確かにクルミってちょっとハイカラかも。

 秋になり、クリより少し遅れて旬を迎えるこのクルミのお話を、自分がいつも入っている飯豊山系の自然と共に伝えていきたい。

飯豊山系、太古の原生林

F9 SS1/80 ISO-200 0補正 10㎜ K-1 DA10-17

 飯豊連峰は新潟、山形、福島の三県にその山域を分けて広がり、その裾野には広大に広がるブナ、ナラなどの広葉樹を主体とした太古の原生林が広がっている。大げさな話を抜きに、山域内には御神木クラスの巨樹が至る所で見られる。登山道から外れて奥に至れば一体いつの時代からそこに居たのか想像もつかないような大きなミズナラが、鬱蒼とした密林の先に鎮座していたりする。

F4.5 SS1/250 ISO-100 -1補正 50㎜ K-1 SIGUMA APO50-500㎜

 今回の目的はクルミ拾い。クルミの木は沢の傍に立っている事が多いので沢に沿って奥に進んでいく。この日は晴れたり曇ったりを繰り返す天候だったが、雨に打たれる心配は無さそうだった。

 普段登山をされる方でも、なかなか道を外れて山奥に入り込む方は少ないのではと思う。色々危険もあるのでやたらに潜り込む所ではないのだが、人が入らないだけあってそこには人が知らない絶景があったりする。まぁ、9割は終わり無きヤブが続いているだけなのでわざわざ入り込む必要ないし、推奨しないでおく。そこにあるのは、『生の自然』だから。

絶景より足元重視の味覚探し

F9 SS1/10 ISO-100 -0.7補正 50㎜ K-1 SIGUMA APO50-500

 ふと足元に目をやるとこれは珍しい、花ワラビがあった。猛暑の影響で夏が長かったせいか、まだ緑色が眩しい。自分はこの花ワラビの時期は海でアオリイカや青魚を必死で釣っているのであまり山に入らないから久しぶりに見た。

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 こんな風に小さなプチプチが沢山付いて、これがもう少し大きくなると褐色になって枯れていく。道端のワラビはこの花ワラビになる前に枯れて倒れているみたいなので、イチョウの木みたいにオスメスがあるのだろうか。大好きな山菜が無事に次の世代に命が繋がれているのを間近で見れて良かった。

F5.6 SS1/160 ISO-400 -0.7補正 240㎜ K-1 SIGUMA APO50-500
F5.6 SS1/8 ISO-100 -1補正 140㎜ K-1 SIGUMA APO50-500 

 クリは期待していなかったが、やはりの状態だった。

 これはシバグリと言われる品種で、お店で売っているクリと比べると随分小さいのが特徴だ。たまにデカいのがあったりするとテンションが上がる。

 山の味覚を狙っているのは何も自分だけではないし、ましてや他の人類でもない。自分にとって一番のライバルは猿だ。特にクリは猿にとって脂肪分たっぷりの御馳走、クルミの様な固い殻にくるまれている訳ではないので、ヤツらにとっては手軽に食べれる数少ない食べ物。実入りが少ない物は手を付けず、美味しい所取りしていってる。

 実はこれも自然の上手な仕組み。猿のように大きな生き物が良いとこ取りしてほぐしたあと、残りの実は虫などの取り分になり、残ったイガは分解され易くなって速やかに土に還る。上手な自然のサイクルだ。

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 別の時に撮ったシバグリの写真。時期になって、猿より先に見つければこんな風に絵に描いたようなクリも見つける事が出来る。勿論クリ園ではない、同じ飯豊山系内で撮った写真だ。

食べられるキノコは滅多に見つからない

 キノコ自体は結構見つけるのだが、いかんせん食べれるキノコは見つからない。昔は五頭連峰でナメコをよく見つけたのだが、有名な所なので皆で採ってしまい、ついには幼菌が育つ条件を満たさなくなってしまったのだろうと思う。温暖化の影響もあるのだろうか、食べれるキノコは減り、逆に毒キノコは以前にもまして増えたように思う。

F4.5 SS1/100 ISO-1600 -1補正 53㎜ K-1 DA18-135

 誤食の定番ツキヨタケ。食べれないキノコに限ってこんな風にビッシリ発生する。やはり美味しいキノコは人間に虐められ過ぎたのだ。これが一斉に蛍光色の不気味な光を、闇夜に浮かび上がらせる。とっても幻想的で、これも自然界の芸術だと思うのだが、確かにこんな不気味な光りかたするキノコなんか食ったら死ぬ思いするよな…(汗)

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 倒木に発生したサルノコシカケ。これも色んな種類がありすぎて把握していない。昔から漢方薬の材料として有名で、なんでもガンの治療に役立つかもしれないとか…。自然界にはまだまだ人間が知らない事が沢山ある。意外な所に難病に効く薬があったりするのかも知れない。

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 色鮮やかな可愛らしい小さなキノコ。横たわる巨木から生えてくるその様は、ジブリの映画『もののけ姫』の世界観を思わせるようだ。

巨木が眠る森

 原生林はその名通り、太古の自然のまま人の手を加える事なく守られてきた自然の事。あるいは原生の生態系を守る為に道などあえて手を加えたもの。当然開発や木々の伐採は制限されおり、場所によっては立ち入りすら厳しく制限されている所もある。まぁ山深い所なんて結局、一部の玄人しか入れないので制限しなくても誰も来ないのだが。

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 森の中で横たわる巨木。倒れてからもう随分経ったのだろう。朽ちてゆっくり、ゆっくりと土に還っていく。生まれた場所に還っていく。その亡骸を見るに相当な巨木だった事が窺える

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 倒れたのはきっと、自分が生まれる前。土に還るのはきっと、じぶんが死んだあと。途方もない時の流れを行き来する。その姿を見つめて言葉を失うのはきっと、自分だけじゃないはずだ。その亡骸が土を作り、草木達を育てていく。そうやって魂は生まれ変わっていく。

F5.6 SS1/15 ISO-100 -1補正 50㎜ K-1 SIGUMA APO50-500
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 深い森の中に横たわる。人知れず朽ちていく。どれだけ沢山の葉を落とし、土を肥やしてきたのだろう。この木が肥やした土は沢山の草木を育ててくれた。虫や鳥や小動物達の隠れ家になってくれた。どれだけ長い間そうしてくれたのだろう。役目を終えて今、自分が生まれてきた土に還ろうとしている。命を育てながら、人知れずに。

季節を失いそうな現代の森

 ここ数年、山奥に入って一番感じるのが10月の森がまだ夏の様相を呈してる。只でさえ2019年の新潟は、最高気温が40度を超える日が二日もあったくらいだ。新潟で気温が40度だ、流石に異常だ!それは森の中でも例外ではない。

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 木漏れ日がなんとも夏らしい。

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 沢の風景も秋とは言えない。むしろ盛夏の様な景色になっている。

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 10月にもなれば徐々に紅葉も始まって山々が色づき始める頃なのだが、このように緑が眩しい。ここだけじゃない。新潟県内の、特に魚沼など内陸方面の山々でさえこのような状態だ。山の中は寒暖差が大きいので、本来であれば紅葉も始まり一月後の11月二週目には綺麗に染まる。そして11月の終わりにはすっかり葉が落ちる。これじゃまるで関東や西日本の紅葉のタイミングのようだ。この年は結局12月の2週目まで紅葉が楽しめた。

拾う前のクルミの写真を撮り忘れたー!

 ここまでやって気付いた。拾う前のクルミ、つまり自然の中のクルミの様を写していなかった…。最悪だ…完全に目的を見失っていた。ってなワケで持って帰ってきてからのこれ見よがしなクルミ。

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 クルミの正体は外果皮と呼ばれる実に包まれた『種』だ。厳密に言うと、外果皮の下に内果皮があってこれが固いクルミの殻の部分。それを割ると種皮と言う薄皮があって、その中の脂肪分の塊が『仁』と呼ばれる可食部位なのだ。サックリ言うと、クルミとは種の中身を食べている事になる。

 この外果皮の部分は雨風に晒されていると自然と腐食して落ちるのだが、自分は森で先に裁いてくる事が多いかな。昔はこのまま大量に拾ってきて雨どいから滴る雨水に打たせたり、タライの中で水に晒して自然と腐り落ちるの待ったものだ。

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 ナイフで果皮を切り剥がしながら、水でかき回して、タワシで擦る。放っておいてもできる作業なのだが、時短で行った。これを天日干しするのだが、乾かすだけならファンヒーターや扇風機でも良い。新潟は晴れが少ないので、乾かすのは先に、太陽が出たら天日干しする。天日干しは必ずしないと、殻から白いカビが生えて大変な事になってしまうw。

 写真に写っているナイフは金物の街、新潟県三条市産の物で、ベルモントと言うメーカーの物だ。とっても丈夫でもう7年も使っている。釣りに山菜採りに大活躍だ!

http://belmont.co.jp/ ←株式会社ベルモント

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 殻を剥いて中身をほじくり出したら、塩をまぶしてフライパンで少々深めに炒る。そして乾燥剤と共に便に詰めて保存するのだ。こうしておけばツマミたくなった時にいつでも取り出して、塩で炒りなおして召し上がれる。山は登るだけが楽しみじゃない、こんな楽しみ方もあるのだ。

冬に同じ場所を訪ねる

 今冬の新潟は初雪も遅れ、スキー場のオープンも危ぶまれる程深刻な暖冬となった。確か15年程前にもそんな冬があった。

 クルミ拾いをした沢を、2019年12月22日に見に行ってみた。本来であればこの時期は雪の下。もう近付く事も出来ないハズなのだが…。

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 紅葉が終わった沢には、葉を落としきって今年の役目を終えた木々が静かに水の流れを見つめていた。

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 まるで初夏の雪解け水のように岩の隙間から湧水が流れ出していた。当然、ここも深い雪の下になっているハズだった。

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 笹類は真冬、雪の下になってもその緑色を保っている植物だ。雪の下で緑を保つ代表的な植物にユキノシタという野草があって、山菜として、薬草として昔から重宝されてきた。

 しかしそんな強い植物達も、これではその生命力を発揮する事が出来なくてどこか残念そうにさえ見える。

在るべき姿でいられなくなった沢

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 冬を迎えて水量が落ち、夏場とは比べ物にならない程痩せ細った本流。ここは春先から夏場にかけては水の底。手前のくぼみは、流れに巻かれた小石が途方も無い時間をかけて少しづつ削ったもの。自然の力に圧倒されるようだ。

 岩が滑らかになっていて色が違う所が水の底になっていた部分で、パッと見ても分かり易い。これが本当なら今は雪の下。もっと時期が進めば4mは積もる場所だ。

 特に今年の暖冬は酷いものがあって、オープンできないスキー場の話題や世界の異常気象の話でもちきりだ。新潟県内では冬眠できない熊が住宅街に現れて、近隣住民がケガをする事件が多発した。温暖化は人類の連帯責任とはいえ、割を食うのはいつも立場の弱い者。

 自分の声など、世界のリーダー達には決して届かない。

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