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2020-02-04

磐梯山と五色沼~東北の朝日~

 2017年7月8日。福島県は猪苗代湖を膝元にして会津地方を見守る山がある。夜明けと同時に入山、磐梯山だ。まだ辺りは暗く、人は一人も居ない。ようやくと白み始めた夜空に少しずつ小鳥の囀りが響き始める。試しにシャッターを切るも、さすがに手持ちの状態では何も写すことはできなかった。足元は悪くない、そうそうに見晴らしのある所まで行きたい。

20170708 F5.6 SS1/100 ISO-100 -0.7 18㎜

 山域の東側に開けた景色を望むことが出来る所まで来た頃には随分明るくなってきた。日の出だ。うっすら雲海のようになっているが、残念ながら豪快に雲が敷かれているわけではなかった。

 東北の澄んだ空気の向こう側に登ってくる朝陽がとても涼しく、真夏である事を一時忘れてしまう程だった。反対側はまだ紫色の空のまま、広がるオレンジ色の空を横目に歩を進めていく。

20170708 F5 ss1/80 ISO-100 -0.7 18㎜

 磐梯山ゴールドラインからの入山だった。このコースは山頂へ最短で到達できるコースなので、あっという間に山小屋を視界に捉えた。

 実はちょうどここまで上がった時、左手の斜面下に二頭のツキノワグマを見つけた。向こうの方がワンテンポ先にコチラに気付いて藪の中を足早に去って行ったが、そこまでを想定していなかったのでチョット油断していた。昔は登山道は『人間の通り道』と知って熊もあまり近付かないと言われた。子供の頃からの経験上概ね合っていると思うが、近頃は何やら事情も変わりつつあるようだ。ここまで来るのにまだ誰一人すれ違っていない事から、この熊達もこの時間帯に人が居ない事を知ってここに居たのだろうか。だとしたらなんだか悪い事したなと思う。

20170708 F5 SS1/1000 ISO-200 18㎜

 櫛ヶ峰だ。この生々しく崩れた山容を見ると改めてここが『火山』だという事が分かる。一応この峰にも上って行けるようだが、今回は見送った。手前に見えている道は、このまま裏磐梯スキー場の入山口に降りていけるコースだ。磐梯山を登るにあたって見所も多く一番メジャーなコースではないだろうか。あまり植物が生えていないところ見ると、やっぱり植生が元に戻るには長い年月がかかるのだなと思う。

あっという間に山頂

 入山から僅か1時間40分程で山頂に到達した。勿論誰もいない…ここを独り占めだ!見渡せばぐるりと開けた景色、目の前には広大な猪苗代湖、霞む会津の町は目覚めたばかりだ。

20170708 F5 SS 1/1000 18㎜

 さすがに少し空気が霞んでいる。それでもこの展望、普段ヤブだらけの山に入っている自分にとっては新鮮な眺めだ!

20170708 F6.3 SS1/125 -1 18㎜

 山頂に鎮座する祠が福島を見守っている。誰一人いないこの景色の中で、しばし静かな時を過ごす。むしろこれを望んで山に来ているようなものだ。名山はどこも街中よろしく人で溢れかえっている。守門岳では最終的に足の踏み場もないくらい人が増えた。だからなるべく早く入山して、誰よりも早く山頂に到達した方がその山の本当の良さが分かると思う。

下山、裏磐梯の檜原湖

下山する頃には沢山の登山客が下から上がってきた。中には小学生の一団も居て、地域に大切にされている山であることを改めて実感した。

20170708 F6.3 SS1/1000 40㎜

 かつての噴火で出来たとされる火山湖、檜原湖。湖面が凍結する冬にはワカサギ釣りで賑わう場所。かくいう自分もここでワカサギ釣りをした事がある。暖かい館船に乗って快適にする釣りは、普段の吹きっ晒しの釣りとは雲泥の差だった。

 そんな檜原湖を眺めながらのんびりと下山したワケだが、この磐梯山周辺はアウトドアレジャーの為の整備が行き届いていて、ライトな散策からガッツリキャンプまで、冬にはもちろんスノースポーツも。実は磐梯山に登る前に麓に点在する『五色沼』を散策していた。登山にくる少し前の事。

静かな早朝の五色沼

 この日は天候にも恵まれて非常に静かな朝を迎えていた。当時にわかに流行っていた『リフレクション』を撮りたくて、でも風の強い新潟市では良い場所が無くて、折角なので一度来てみたかった五色沼へ訪れてみた。

20170624 F4.5 SS1/4 ISO-100 31㎜

 早起きして大正解だった!誰もいない静かな水辺、思った通りキレイな湖畔だ。この頃まだ新しかったK-70、こんな所で写真を撮ってみたかったんだよと心の中でグッと拳を握った事を今でも覚えている。

 PENTAXの売り場があるお店では大抵こんな感じのプリントが貼ってあって『PENTAX=アウトドア』のイメージを定着させてきたように思う(後にこれが誤りと言わないまでも適さない事を思い知る)。

20170624 F4.5 SS1/250 ISO-400 68㎜

 少し奥に進む(意外と足場が悪い)、狙い通り風も無くきれいなリフレクションが見れた!デジタルの時代になって、誰でもきれいな景色をきれいなまま残せるようになったことは本当に良い時代だと思っている。

20170624 F4.5 SS1/125 ISO-100 80㎜

 どんどん奥へ進む。鬱蒼と茂る誰もいない森の中はまるで秘境のような空気感だった。

20170624 F6.3 SS1/125 ISO-100 36㎜

 整備された歩道の一番奥まで来た。磐梯山だ!だいぶ霞んでしまっているが、湖面に写る森と鎮座する山の風景はとても良い。こんなに恵まれたロケーションなかなか無いと思うので、今後ウデを磨いてぜひ別のシチュエーションで撮りに戻って来たい!

20170624 F5 SS1/1000 ISO-800 18㎜

磐梯山周辺はまるで尾瀬のように独特の自然形態を持っているようだ。かつての噴火によってこの辺一帯が一度リセットされたようになったからだろうか。ぜひまた訪れてみようと思う。

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