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2026-03-25

剣鉈を狩猟刀として ~新潟県燕市の刃物・越乃一刀~

 狩猟に刃物は付き物、決して切り離す事は出来ない絶対の存在。だからこそ狩猟者はその刃物に対して様々なポリシーを持っている。こだわりと信頼の一本を持つ者もいれば、「どうせ消耗品、山で無くす事もあるからこれでいい」と安価なナイフや包丁の者もいる。

 ツールの選択はそれを使うシチュエーションによるところが大きいと思います。来る日も来る日も枝肉をバラしている食肉処理場の職人達が、高価な料理包丁なんか使っていられないわけです。毎日研いであっという間に刀身が減っていきます。

 料理包丁は特に選択が複雑になるように思います。とある板前さんは「お客様の前で魚を捌くなら、安っぽい包丁はつかえねぇ」と仰っていました。

 対して自分は狩猟者、特に獣を追って山奥へ入る事が多いので、理想を言えば一本で全ての用事が賄える刃物がいいです。

 獲物の止め刺しに解体は勿論、薮木打ちや薪づくり、あるいは魚を捌いたり木の実を割ったりなどのキャンプ飯的な作業まで。いつもやるわけじゃないけど、いざとなったらちゃんと通用するような物がいいですよね。

 ただの大きめのナイフでも良かったのですが、イマイチ「コレだ!」と言えるアイテムが見つかりませんでした。そんな中、たまたま立ち寄った刃物店で『剣鉈』という種類の刃物の存在を知ったのです。

◆ナイフであり、ナタであり、包丁である

 初めて見た時は和風デザインの大きなナイフなのかな?と思った。近頃は和風デザインのナイフにパラコードグリップなんかしつらえて和洋折衷な物もチラホラ見かけていたので。

 でも少し趣の違うこの刃物に惹かれて手に取ってみると、ずっしりと重い…これはナイフの重さではないと感じました。昔ミリタリーショップで映画ランボーモデルのレプリカナイフを持った事がありました。めちゃくちゃ大きなナイフで、見た目通りずっしりしていて圧倒された事を思い出しました。

●剣鉈とは

【通常の鉈とは異なり、先端が鋭く尖っているのが特徴。主に狩猟や林業で使用される。】※出典ウィキペディア→剣鉈 – Wikipedia 

 恐らく多くの方がイメージする鉈は、先端が直角に角張っており刃が付いていない物だと思われます。それは腰鉈と呼ばれて、いくつかある鉈の種類の一つです。一番メジャーな鉈の形かな。写真の通り先端が鋭利になっており、一般的なサバイバルナイフと同じような形をしています。片刃と両刃があり、片刃は切れ味重視・料理向け、両刃は耐久性重視・作業向けとなっています。

 存在自体は大昔からあったようですが、その出自は不明のようです。2020年頃からのキャンプブームで注目を浴びたようです。

 自分が選んだのは両刃のタイプで刃渡りは6寸(約180㎜)。7寸刃渡りもあったのですが、さすがに長いと感じてコチラを選びました。鋼材はダマスカス鋼で、身幅は5㎜とかなり厚めです。お値段は45,100円でした。かなり高い買い物でしたが、気に入ったのでヨシとします。

 柄の中に入り込んでいる鋼材部分を中子と呼ぶのですが、用途によってどれくらい入り込むのかがある程度決まっています。例えば料理包丁なんかは破壊作業はしないので中子はかなり浅いです。その分コストも抑えて重量も軽くする事ができます。

この剣鉈は柄の半分程度の半中子です。フルタングならより頼もしかったのですが、そうすると更に値段が高くなってしまうでしょう。薪割は用途としては多くないので十分です。

 越乃一刀と銘打ってありますが、あまり目立たないですね。この辺は折角のブランドなのでもっと彫り込んでも良かったと思いますが、どうなんでしょう。

 補足ですがこの記事を執筆している2026年3月現在、このメーカーでのこのモデルの剣鉈はすでに製造がされていないようです。現在店頭に並んでいる物で販売は終了のようです。今後製造再販の予定は無いと伺っています。

 ザ・日本のアウトドアナイフ!って感じがして好きなフォルムなのですが、地元新潟のメーカーにまた打って欲しいです。

 鞘は銅板まきの木鞘です。最近よく見かけるデザインの鞘なので、汎用品でしょうか。張り合わせ構造ですが、かなりしっかりしています。洋風ナイフならレザーシースとかが良いのでしょうが、剣鉈という和刃物ですからむしろこちらの方が良いですね。他のタイプの剣鉈では本体でコストが掛かっている為かナイロン製の袋シースの物がありました。ナイロン製の物は刃物の出し入れで切れて破けていくのであまりおススメできません。

 木鞘のお陰で色々飾り物ができるのですが、以前仕留めたイノシシの牙と、漆塗りの根付を飾ってみました。根付は新潟県村上市で作られた物で、同市は村上堆朱という特産品があります。デザインはナミチドリという和柄です。

◆多岐にわたる活動の助けになる選択

 道具類はその目的に対して専門性があった方が良いのですが、自分のように活動が多岐にわたるなら汎用性の高いツールの方が成果を発揮しやすいと感じています。同じアウトドアでも、キャンプと登山と狩猟ではまるで違う活動になりますし、求められるツールの性能も変わってきます。

 そんな中で、【どんなシーンでもいつでもお気に入りのツールを使っている】という感覚に、なんだか安心感を覚えるんです。

 手に馴染むのか、手が馴染むのか。物があふれていくらでも替えがきく今の時代、ずっと使い続けたいお気に入りがあるのは幸福な事なのかも知れませんね。

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